「コクリコ坂から」感想


久々に映画レビュー。宮崎吾朗監督が、前作「ゲド戦記」の汚名を雪ぐべく送り込んできた新作「コクリコ坂から」。なんやかんやあってようやく見ることができた。

「ゲド」は意味不明なシーンの連続と原作のイメージとかけ離れた迷作としてジブリとファンタジー映画のファンを幻滅させたが、「コクリコ」では脚本を宮崎駿御大が担当してたので最低限度の期待はできる。

そう思ってなるべくハードルを下げて行ったらなんのその。面白いじゃないか。少なくともゲドは論外として、「アリエッティ」レビュー)よりはいい。

メインキャラ以外にも生徒会長や下宿・カルチェランタンの住人などなど登場人物のキャラが立ってて飽きさせない。高度経済成長期の混沌とした町並みと、学生運動に沸く高校の描写は、それに縁の無かった僕にも懐かしさと羨ましさを感じさせてくれた。世界観が魅力的、それに尽きる。

ただ、ストーリー自体は少々詰め込みすぎで焦点がぼけてる感はある。主人公とヒーローとの恋愛模様とカルチェランタンカルチエラタンの存続問題、出生の秘密や将来の夢。元が連載漫画なので 90 分の映画にまとめるのは厳しかったのかも知れないが、もっと尺を割いて欲しいと思えるようなシーンがいくつかあった。

もう一つ物足りなかったのが「絵」で、印象に残るような綺麗なシーンが余りなかった。「ポニョ」の圧倒的な迫力で迫る大波や、「ハウル」で異常なほど描き込まれた“動く城”のような、観客の度肝を抜くようなシーンは求めないとしても、「アリエッティ」の台所のシーンみたいな、いつもの世界をちょっと視点を変えて見せてくれるようなものが欲しかった。

総じて見ると、水準以上の出来だとは思う。特に前作の惨憺たる有様からすると、監督の成長ぶりは褒められていい。それでも、この映画が“ジブリブランド”でなくても見たいと思うかと問われれば、少々自信が無いのであった。

おまけ

僕の高校時代の部活と言えばベーマガコンプティークを読み漁りながらしこしこソースを打ち込んだり、顧問の先生が来ないのをいいことにゲーム大会に興じたりと、この映画で描かれるような青春とはほど遠かった。この映画みたいなのが普通なの? これフィクションだよね? なんか羨ましすぎるんですけど!

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