「借りぐらしのアリエッティ」感想


宮崎駿が監督しないジブリ作品というと、直近では「ゲド戦記」というどうしようもない例があった。そんなわけでだいぶハードルを下げて見に行ったつもりだったのだが……。う〜ん。これは、“ゲドよりはマシ”といったレベルかも知れない。

スタジオジブリ:新作「借りぐらしのアリエッティ」 宮崎駿脚本、36歳、麻呂こと米林監督を抜てき – MANTANWEB(まんたんウェブ)
http://www.mantan-web.jp/2009/12/16/20091216mog00m200035000c.html?inb=yt

今回の作品は宮崎監督が企画・脚本、監督は新人の米林宏昌が務めた。だが周知の通り、宮崎駿は映画を作るときに脚本を必要とせず、直接絵コンテを描きながら作り込むという作風だ。今回の“脚本”という役割も、大まかなプロットを監督に口頭で伝える程度だったのではないかと想像する。

すると監督の役割は、宮崎駿の与えたイメージを膨らませ、大まかだったキャラクタに肉付けする作業になる。これがどうにもうまく行っていない。

人間が行う環境破壊に対しての警鐘なのか? それとも“滅び行く種族”に対して歴史的な見地から哲学的なテーマを導きたいのか? はたまた、単に少年少女の成長とその冒険活劇を描きたいのか? この辺がはっきりしないのだ。

もちろん、この“テーマ”とやらは深く映画を楽しみたい人が自分で探し出せばよいのであって、あからさまに提示する必要はない。問題なのは、娯楽映画として見てなんの高揚感も満足感も得られない、映画として純粋に“つまらない”ことにある。

これではプロデューサーの鈴木敏夫がねがう「『崖の上のポニョ』越え」は到底無理だろう。あの作品は子供向けの娯楽作品として作り、しかもそれに完璧に成功していながら、大人が“テーマ”を深読みしても十分対応できる傑作だった。

崖の上のポニョが神過ぎた件:ハムスター速報 2ろぐ 跡地
http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-487.html

古稀を迎えてますます盛んな天才監督と、ジブリ歴代最年少の新人監督を比べるのは酷かも知れないけどさ。先週行った「インセプション」と同じ 1800 円を払って見てるわけよ? せめて値段分は楽しませて欲しいというのが正直なところ。こんなていたらくでは、宮崎駿がいなくなったら日本のアニメはどうなるのだろう。細田守にでも任せようか?

ダメなところばかり書いてしまったが、いいところももちろんある。森や住まいの丁寧な描写、“人形の家”の驚くほど美しい色彩、ここら辺はジブリの面目躍如だ。今回は声優の演技も問題ない。

でも一番の演技者は猫! 飼い主に対してのつれない態度、獲物を追うときの荒々しさ、そしていざデレたときの従順な仕草! これは久々によい猫を見た。監督は猫好きなのだろうか。

まとめると、「ゲド」よりはマシ、でも 1800 円の価値はないってところ。引退するする詐欺の宮崎駿は、少なくとももう一本の長編を撮るようだ。将来の日本アニメよりも、まずはそちらに期待したい。

ジブリ新作監督に若手の米林宏昌氏、宮崎駿監督は次回作にやる気満々-アニメニュース Japanimate.com
http://japanimate.com/Entry/1272/

2 thoughts on “「借りぐらしのアリエッティ」感想

  1. 映画:借りぐらしのアリエッティ 今、この物語を映画化する「意味」とは。

    当ブログでは、通常ネタバレしないように最大の配慮をしているつもり。
    なのだが、今回に限ってはラストにふれることで、この映画の価値について論述したいので、あ…

  2. 映画「借りぐらしのアリエッティ」童話の本を開いてみると

    「借りぐらしのアリエッティ」★★★★
    志田未来、神木隆之介、大竹しのぶ、竹下景子、三浦友和、樹木希林 声の出演
    米林宏昌監督、94分 、2010年7月17…

コメントを残す