「グリーン・ゾーン」感想


今日は日比谷スカラ座へ。隣の宝塚劇場で公演があったのか通りが女性で埋め尽くされてて驚いた。スカラ座に入ると今度はかなりご年配の客ばかり。場所が場所ではあるけれど、戦争映画のファンというとこの年齢層が多いのだろうか。前回の池袋サンシャインとはエラい違いだった。

作品について

で、表題の「グリーン・ゾーン」である。先に“戦争映画”と書いたが、それは厳密には正しくない。あらすじはこんな感じ。

イラク戦争が終わってすぐの頃、主人公は開戦原因ともなった“大量破壊兵器”の探索を任務とする MET 部隊として赴任する。だが、どこに行ってもそんな恐ろしい兵器は見つからない。主人公は情報自体が間違っているのではないかと考え始め、調査をする内に陰謀に巻き込まれていく……。

監督は「ユナイテッド 93」「ボーン・アルティメイタム」で有名なポール・グリーングラス。彼が「ボーン」のマット・デイモンと再びタッグを組んだと言うことで期待していたこの映画だったが、本国での評判はさんざんだった。曰く、「事実を誤認している」「愛国的でない」「主人公の行動は法に悖る」とまあ、さんざんな感じ。マイケル・ムーアみたいな反骨心溢れる映画人から激賞されたりもしたが、興行的には失敗と言っていい有様だった。

だが、興行的にダメだった理由は脚本が「反米的」であったせいだけであろうか? 少なくとも僕にはそう思えなかった。

「リアル」と「スピード感」

この監督の真骨頂は手撮りカメラによる撮影とカット割りの妙にある。スピード感を強調しながら見ている方も混乱させてしまうそれは、実際に起こった事件を荒れる現場そのままに描写した「ユナイテッド 93」で効果的に働いた。

それに対して「ボーン」はフィクションで、主人公は超人的な能力を誇る暗殺者。劣勢な中で刺客を次々に倒していくシーンを手撮りカメラで追ったシーンでは、そのリアルな格闘描写と相まって、圧倒的な臨場感を生んだ。

有名俳優であることの弊害

これらの名作に比して、「グリーン・ゾーン」は中途半端なのである。主人公は「ボーン」と同じくマット・デイモンが演じるのだが、今回は正規兵である彼に活躍の余地は少ない。それに実際の事件を元にしているために、そうそう史実に外れた描写はできない。この辺がもどかしい。

ドキュメンタリー性を追求するなら「ハート・ロッカー」のように、主役に無名の俳優を抜擢するべきではなかったか。今や売れっ子となったマット・デイモンでは観客はアクション映画を期待して劇場に足を運ぶのではないか。その辺が、興収的に大失敗と言っていい状況の原因の一つであったように思える。

総評

うちの母は「ボーン」シリーズとマット・デイモンの大ファン。そんなわけでこの映画もおすすめしといたのだが、ちょっと早まったかも知れない。エンターテイメントを期待して見に行くとすっきりせず、真実を追究するドキュメンタリーとして見ても物足りない。これよりは「ボーン」4 作目の方が見たかった! それが見た後の、僕の偽らざる心境であった。

「ボーン4」からP・グリーングラス監督が降板!マット・デイモンの去就は?
http://eiga.com/buzz/20091201/16/

『ジェイソン・ボーン』シリーズ4作目はキャストを一新して流行の前日譚か?
http://www.cinematoday.jp/page/N0022214

おまけ

字幕は“かの有名な”戸田奈津子だったのだが、今回も又やってくれました!

「アルファ 1 からブラボー 6 へ。」という通信が、字幕では「α1 から V6 へ。」となっていた。「V」って何だよ! ブラボー(Bravo)は「B」だろ! 中学生でも知ってる英語(元はイタリア語)を間違えるプロの翻訳家ってどうなの……。ナッチはホントに期待を裏切らない。もうどうにかして欲しいよね。(´・ ω・`)

2 thoughts on “「グリーン・ゾーン」感想

  1. 映画「グリーン・ゾーン」見つからない、大量破壊兵器が見つからない

    「グリーン・ゾーン」★★★★
    マット・デイモン、グレッグ・キニア、ブレンダン・グリーソン出演
    ポール・グリーングラス監督、114分、2010年5月14日…

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