渋東シネタワー改め、TOHO シネマズ渋谷で見てきました。レディースデーだったこともあり劇場は満員。映画の対象は子供連れの親子かとは思いますが、渋谷と言うこともあって、観客は若い女性ばかりでした。
以下感想を書きますが、ネタバレ有りなので注意。
初めてのファンタジー
さて、細田守監督というと SF ファンタジーというイメージが強いので、この映画のビジュアルが公開されたときはかなり不安だったものです。
それで見た結果、結論から言うと、やっぱ「時かけ」が最高だったな、と。
ジャンルが違いすぎるので簡単に比較はできないのでしょうが、「時かけ」「サマーウォーズ」の完成度から比べると今ひとつな気がします。
ちょっとうまくいきすぎ?
今作は前二作と違い、「子育ての大変さ」とか「特異な個性を持った人への偏見」といった、比較的シリアスなテーマを描いています。
このようなテーマだと、現実にそれを体験してがんばってる人がたくさんいるわけで、それには説得力がちょっと足りないかな、と。
別に、主人公「花」のリフォーム能力高杉とか、貧乏学生のくせに貯蓄大杉とか、屁理屈言う気はありませんが、周囲の人が全員協力的だったりしてトラブルが少なすぎるのは気になります。
大河小説で読みたい!
話は変わりますが、僕は大河小説が好きです。井上靖の「しろばんば」から始まる三連作とか、北杜夫の「輝ける碧き空の下で」とかは何度も読みました。
これらの小説で描かれるのはたいてい暗く苦難の多い時代なのですが、過酷な境遇もごく普通のこととして受け入れ、楽観的に生きている主人公たちを見るとこちらが励まされる気がしてきます。
「おおかみ〜」もある意味似た描写をしているのかもしれませんが、如何せん、2時間弱というのは時間として短すぎます。
田舎というのは閉鎖的なものだとは言いませんが、意地悪する隣人が一人はいてもおかしくないし、農業初挑戦だった花が一年目からジャガイモ大豊作というのも「?」な感じ。
時間経過の描写が曖昧なので、たぶんここら辺の苦労した出来事はすっ飛ばしたのかもしれませんが、そこを見せなきゃダメだろう、と。
「おおかみ〜」がもし小説で発表されたとしたら、この辺の描写が増えることで説得力が増したと思うのです。雪を主人公とするならば、「しろばんば」みたいに「小学校編」「中学校編」……と続けることも出来るでしょう。
小説が無理なら NHK 辺りで 1 クールアニメにしてもいい……いや、こっちがもっと困難か。
それとも、今時の観客はこんなの求めてないんですかねえ? つらいのは現実だけで結構。映画の中くらいいい目を見させろ。実際に興収見ると大ヒットしているわけですから、僕の方が少数派なんでしょうね。
おまけ
ググってて気付いたのですが、「輝ける碧き空の下で」は絶版なんですね!
「どくとるマンボウ」シリーズで有名な北杜夫の超力作ですが、埋もれさせるにはあまりにも惜しい。古本屋で見つけられた方は速攻で確保することをオススメします。僕もこのぼろぼろになった文庫本を大切にしよう……。
あ、でも、美しい題名と内容にはかなりのギャップがあるのでお気を付けて……。
3ToheiLog: 本当は怖かった北杜夫
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