なんというかがっかり。「ガタカ」の監督だよ!「トゥルーマン・ショー」の脚本も書いたんだよ!絶対おもしろいって!と力説する知り合いにつられて見に行ったのだが、スタッフロールが終わった後、ごめん。「シャーロック・ホームズ」にすればよかったね……。と謝られるほどのオチ。どうしてこうなった……。
もう公開から時間もたってるので以下はネタバレ全開で行きます。
富裕層が時間を独占し、貧乏人は容赦なく死んでしまう社会。主人公は日銭ならぬ時間を稼いで文字通り命をつなぐ毎日であった。
って、ここからいきなり説得力ないんですよ! なんでこれほど命の危険にあふれた生活を送ってるのに休憩時に珈琲を買う余裕がある? 仕事帰りにバーに寄ったりする? その金貯金しとけば母ちゃんだって助かったでしょ!
でもまあ、この辺は現実社会でもあることだ。稼ぎも少ないのにカードで買い物しまくって自己破産、なんてのはよくある話。これからは母ちゃんの不幸に学んで、賢く真っ当に生きたり、一流のテロリストとして社会を震撼させたりするんだね。
ところが、そこで主人公が選んだ体制への反抗というのが、身代金誘拐と銀行強盗なわけですよ。何それ? スケール小さくない? もっとこう、悪の本拠地に潜入して暴れまくるとか、金持ちを騙くらかして破産させるとか、そういう展開はないの?
そこで現れたのが父ちゃんの謎。監視官(この世界の警察)が思わせぶりに言うわけですよ。「おまえの父の死因はそんなものではない」おお! キタコレ! つまり、父ちゃんは体制の根幹に肉薄するような重大な機密をつかんでしまったので組織に消されたんですね! そして主人公はその謎を解くために孤独な戦いを続けるんですね! やっと本編始まるよ!
というワクワクのまま、結局最後まで本編は始まらずに映画が終わってしまった。ドウシテコウナッタ。
まじめに考察するならば、この映画は資本主義社会の限界と不公平について問いたかったのだろう。お金(時間)の多寡が人生の善し悪しまで決めてしまうような社会では人は決して幸福になれない、と。
でもその解決策が、銀行強盗して金(時間)を貧乏人に分け与えるってのはあんまりですよ……。地元の企業に投資して雇用を創出するとか、教育制度を充実させて住民の意識を改革するとか、あるいは正反対に、政治家を暗殺しまくるとかでもいい。銀行強盗程度で世の中がよくなるわけがないですよ。
設定はすばらしいのに、展開は尻すぼみ。非常にもったいない映画でした。なんだかむしゃくしゃするので、発売したばかりの「ミッション: 8 ミニッツ」でも見ることにしよう……。
「TIME/タイム」(2011)感想。
AKBの女の子の吹き替えにショックを受けて、具体的な感想をひとつも書いてなかった…。 ボクよりよっぽど原理主義的なSFファンのツレは、この作品に限っては「…