「ミッション : 8 ミニッツ」感想(ネタバレあり)


すばらしい映画だった。今年見た映画の中では最高傑作。オリジナル脚本の映画としては「バタフライ・エフェクト」を見たとき以来の衝撃だった。

何度も繰り返す 8 分間の中で主人公が驚き、慌て、怒り、恐怖し、恋に落ち、とにかくありとあらゆる感情を発散させながら駆け回る。でも現実の彼は瀕死の体で脳と体の一部が残るだけなのだ。

“暗闇の世界”から

彼がどんな表情、動作でグッドウィン大尉に話しかけたとしても、向こうでは言葉が文字となって画面に現れるのみ。映画中盤でこれが分かったときには何とも言えない悲しい気持ちになった。人がどんな感情を抱いたとしても、声がなければ他人に伝わらない。

ここで思い出したのは、NHK スペシャルで見た ALS 患者の話だった。

NHKスペシャル|命をめぐる対話 “暗闇の世界”で生きられますか
もし、あなたが意識ははっきりしているのに、しゃべることも体を動かすことも出来ず、自分の意思を他人に伝えることが困難になったらどうしますか?

この映画の主人公はかろうじて意思の疎通ができた。そしてグッドウィンという理解者によって名誉ある生を終えることができた。もし彼女という存在がなければどうなっていたのか……想像するだに恐ろしい。

“胡蝶の夢”

彼が経験した幾度もの 8 分間は機械によって作り出された幻想であったかも知れない。彼がヒロインのために流した涙や、父親と電話越しに話したときの感情は、彼の妄想の産物だったかも知れない。

しかし、こうも考えられないだろうか。完璧な空想の世界が作れたとしたら、それはもう一つの現実世界と言えるのではないか。

彼が得た幾度もの 8 分間の体験は全て現実だったのだ。ソースコードシステムはその稼働と同時に、もう一つの別の世界を作り出す装置だった。稼働から 8 分間を過ぎると安全装置が働いて元の現実に戻れるようになっていただけだ。

物語のラストで装置の停止後も主人公が元の世界に戻ってこなかったのはそういうわけ。彼は自分が絶命することで、システムの安全装置を外したのだ。

ラストシーン

ここで、映画を見た人の間で意見の分かれるところがある。主人公がヒロインとキスした瞬間に列車内に流れる時間が止まってしまう。あの印象的なシーンで映画を終えるべきで、その後は蛇足ではないかというのだ。

僕はそれに肯んぜない。彼のそもそもの目的は父親と話すこと完全に死ぬことにあった。

彼はショーンの生まれ変わりとしてヒロインと生きていくことなんて望んでいない。そんなことしたら身代わりにされたショーンが浮かばれない。

だから、これはほとんど僕の妄想になってしまうけど、彼は映画のエンディング後に自殺したのではないかな。もちろん体をショーンに返して、彼の意識だけを眠らせてしまうようなやり方で。そんなことが可能かどうかも分からないけど、グッドウィン大尉にメールで連絡を取ったのにはそんな意図もある気がする。


色んな解釈が出来る深い設定と筋書き。それでいて親子間の愛情など涙を誘うテーマも欠かさない、エンターテインメントの王道とも言える A 級の映画だ。もっとたくさんの人に見て欲しい、心からそう思える映画だった。

One thought on “「ミッション : 8 ミニッツ」感想(ネタバレあり)

  1. 映画「ミッション:8ミニッツ」その時を取り戻すまで何度でも

    興行収入は初登場5位から2週目には8位と
    地味なチャートアクション
    でも映画は面白かった!

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