最初に感想の結論から言ってしまうと、肩すかし食らった感じだった。公開前から各種サイトや TVCM で「衝撃の結末!」と煽りまくり、あまつさえ、実際の上映前に「この映画のストーリーには謎が含まれています」「あらゆるところにヒントが隠されています」などとテロップが出る始末。よほど難解で解釈に悩む映画化と思っていたのだが……。
ラストにオチをきちんと解説しちゃうんだもんな〜。いい映画だし、スコセッシ監督の映画の中では一番面白かったと思うけど……。
以下はネタバレ含むので注意。
いきなりネガティブなことを書いたがつまらなかったわけではない。ディカプリオと職員達が失踪した女性患者について行う虚々実々の駆け引きは面白かったし、「C 棟」を探索するシーンはホラー映画と見紛うばかりの緊張感。そこまでは確かに良かった。
でもその後の「ネタ晴らし」は少し蛇足だったのではないか。あれほど鮮明なイメージと共に「回想」を語られると、ストーリーについての解釈の余地が無くなってしまう。具体的に言えば、次の 2 つの解釈ができるとする。
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ストーリーを素直にそのまま受け入れた場合。つまり、ディカプリオは 3 人の子供を溺死させた妻を殺してしまい、そのショックで妄想癖のある精神病患者になってしまった。「島」での治療はある意味成功し、ディカプリオはつらい現実から逃れるためにロボトミー手術を受け入れる。
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ひねくれた見方をした場合。ディカプリオの妄想はほとんどが真実に近いもので、実際にあの「島」は人の精神をゆがませる人体実験を行っていた。ディカプリオは薬で精神を壊された上に偽の人格まで作られてしまう。
この 2. がほとんど無理なんだよね。 1. の解釈でストーリーが全て破綻無く読めてしまう。これでは物足りない。ストーリーが“わかりやすすぎる”のだ。もうちょっと不可解な方が魅力も深まるというのに……。
もうぶっちゃけて言えば、「マルホランド・ドライブ」や「ファイト・クラブ」のような映画が僕は好きなのだ。映画を見終わった後に様々なシーンの意味を見た人と語り合う、そう言う深さがこの映画の脚本には余りない。
逆に言えば、その分人を選ばない映画だとも言える。家族で見に行くのはちょっとアレだけど(残酷なシーンもあるし)、友人や恋人と見に行くくらいなら問題ないだろう。これが「マルホ〜」だったら友人・恋人をなくす心配すらしないといけないから大変だ。
結局「シャッター アイランド」を見て「マルホ〜」の偉大さを再認識してしまった。多少とも映画好きと言えるなら「マルホ〜」は絶対見るべき映画だよ! ちょうどこんなニュースもあったしね。
米誌が選ぶ過去10年の「重要な映画」50本 第1位は「マルホランド・ドライブ」 : 映画ニュース – 映画のことならeiga.com
http://eiga.com/buzz/20091203/17/