「主演 : ラッセル・クロウ、監督/制作/脚本 : ポール・ハギス」という、これならどう考えても外れはないだろうと思える要素だけで見に行ったこの映画だが、存外に面白かった。
ポール・ハギス作品の重要な要素として“等身大の主人公”というのがある。007 の二作品「カジノ・ロワイアル」「慰めの報酬」においてもそうで、007 たるジェームス・ボンドがずっこけたり敵に捕まって拷問を受けたりと、それまでのシリーズでは考えられないような演出があった。主人公を完全無欠のヒーローに描かないところにリアリティがあるのだ。
「スリーデイズ」のストーリーは単純明快。「冤罪に問われた妻を助けるために刑務所から脱獄させる」という一言で終わってしまうほどのものだが、ラッセル・クロウ演じる主人公はどこにでもいそうな学校の先生。裏社会に通じてるわけでもなく、金に余裕があるわけでもない。そこを妻への愛の力で無理矢理がんばるのだが、失敗続きでうまくいかず、肝心なところは運で乗り切ったりする。一歩間違えれば起伏のない単調なストーリーになるところを脚本と演出でうまく補っている。
気になった点はその裏返し。所々ご都合主義的な展開が見られるところだ。序盤拳銃の装塡の仕方も知らなかった主人公が、実際に使ってみるときちんと的に命中させたり、絶体絶命なピンチは主人公の努力と関係ない運だけで回避したりする。ある意味リアリティがあるとも言えるのだが……。批評家受けが良くないのはそんなところが原因なのかな?
傑作とまでは言えないが、見る価値はあり。ポール・ハギス作品が好きなら見て損はないだろう。