ちょっと路線変更。映画の感想ネタもちょくちょく置いていきます。べ、別に Perl ネタで書くことなくなった訳じゃないんだからね!
映画『第 9 地区』予告編
あ…ありのまま、今日起こったことを話すぜ!
「俺は SF を見に行ったと思ったら始まったのは人種差別問題を扱った社会派映画だった。と思ったらやっぱり戦争モノで最後はロボットに乗って戦う映画だった。」
な、何を言ってるのかわからねーと思うが、今日の感想はそんな感じ。さすがアカデミー作品賞ノミネートは伊達じゃない。一口も二口も違った「SF 映画」だった。
ある日、南アフリカのヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船が現れる。中には 100 万人以上の異星人がいたのだが、彼らは遭難でもしていたのかほとんどが死にかけており、南アフリカ政府が「保護」することになった。
だが元からの住民とのいざこざが頻発、政府は「第 9 地区」と名付けた避難所に異星人を押し込めた。そこはあっと言う間にスラム化し、人間のゲリラが異星人と同居する奇妙な無法地帯となる。そして 20 年後……。
というのがあらすじ。このまま「E.T.」の如く異星人との交流を描くSFになるのかと思ったのだが、そんな簡単な話ではなかった。
国際企業 MNU は国連(みたいなもの)から委託を受けて彼ら異星人との交渉を受け持つ組織。……のはずが、それは恫喝や詐欺と異ならず、異星人を文字通り虫けらとして扱う非道な物だった。
銃で脅して契約書にサインさせ、気に入らない相手は小屋ごと焼き尽くし、彼らの生態を調べるため生体実験を繰り返す。見ていて胸くそ悪くなるシーンがてんこ盛りだ。
そう。これらは全て歴史的に人類が他人種に対して行ってきたことだ。
舞台がアパルトヘイトの猖獗を極めたヨハネスブルグなのもそれを暗示している。映画ではありとあらゆる残酷なことが行われるが、現実はそれの遙か斜め上だったはずだ。
アフガンやイラクでのアメリカ軍の行いが非難される今、この映画が作られたことには大いに意味がある。
……という風に、マジメな見方だけで終わらないのがこの映画のスゴいところなのだ。
途中からは本格的な銃撃戦やパワーローダーを使っての戦闘まで描かれ、家族愛を描く感動シーンまである。あくまで娯楽に徹しながらも社会を鋭くえぐるテーマを伝える、まるでスピルバーグの映画のようだ、とは eiga.com の評。
僕も同感。スピルバーグはもうちょっと娯楽の成分が多いがね。
第9地区 : 新作映画評論 – 映画のことならeiga.com
http://eiga.com/movie/53212/critic/
もっとも、「テーマ」以外の成分はずいぶん大雑把である。
脚本にはかなりアラがあるし、SF的な設定も物足りない。パワーローダーに乗っての戦いは面白かったけど、銃撃戦自体はそれほど目新しくはない。一番伝えたい“人種問題”以外の要素はわざと手を抜いてあるのだろう。
「ミリオンダラー・ベイビー」に於いてボクシング自体のシーンが適当だったことを思い出した。
銃撃戦を楽しむ娯楽映画として見るのもいい。現代の難民問題を考える社会派映画として、見た人と議論するのもいい。こういう映画が生まれるのがハリウッドのスゴいところだねえ。
改めて調べたら元々の制作はハリウッドとは言えないね。ハリウッドでないからこそ、生まれた映画なのか。
『第9地区』お薦め映画
独創的なストーリーと、リアリティのある映像。ワクワクする展開でアクションシーンも見ごたえあり。風刺は利いているが笑いに嫌みがないスマートな社会派SFドラマ。